成果が出るマーケティングは、なぜシンプルなのか。
マーケティングとは、施策を増やすことではありません。
誰に、どんな価値を届けるのか。その問いを、組織全体で考え続けることだと私は思っています。
マーケティングという言葉ほど、人によって意味が違う言葉はありません。
マーケティングと聞くと、広告やSNS、SEO、展示会、ウェビナーなどを思い浮かべる人が多いかもしれません。
もちろん、それらもマーケティングです。
けれど、それはマーケティングの一部でしかありません。
私は、マーケティングには二つの役割があると考えています。
一つは、戦略を考えるマーケティング。
もう一つは、戦略を実現するマーケティングです。
戦略がなければ、戦術は増え続けます。
誰に価値を届けるのか。
どの市場を選ぶのか。
競争相手と何が違うのか。
どんな価値なら選ばれるのか。
こうした問いを考えるために、PEST、3C、SWOT、STP、PLCといったフレームワークがあります。
私は、それらを「答えを出すための道具」ではなく、良い問いを見つけるための道具だと考えています。
この問いが曖昧なまま、
広告を出す。
展示会に出展する。
コンテンツを作る。
メールを配信する。
SNSを更新する。
そんな戦術だけを積み重ねても、成果は偶然に左右されます。
施策は増えても、「なぜ、その施策なのか」が説明できない状態になってしまうのです。
良いマーケティングは、一人ではつくれません。
私は、マーケティング部門だけで良いマーケティングができるとは思っていません。
営業は、お客様の声を一番近くで聞いています。
インサイドセールスは、検討段階のお客様が何に迷っているのかを知っています。
カスタマーサクセスは、導入後にどんな価値が生まれたのかを知っています。
プロダクトは、製品の可能性と限界を知っています。
そしてマーケターは、それらを市場へ届ける方法を考えます。
誰か一人が正解を持っているわけではありません。
だから私は、マーケティングの仕事とは、施策を考えることよりも、異なる視点をつなぎ、一つの方向へまとめていく対話だと思っています。
共通言語がある組織は、強い。
私は毎年、入社2年目の社員を対象に、一日かけてマーケティング研修を行っています。
マーケターを育てたいからではありません。
営業にも。
開発にも。
カスタマーサクセスにも。
管理部門にも。
マーケティングという思考を知ってほしいからです。
「誰に、どんな価値を届けるのか。」
この問いを共通言語として持てるようになると、部署を越えた対話の質が変わります。
営業は「売る」だけではなく、お客様の価値を考えるようになります。
開発は「作る」だけではなく、市場とのつながりを意識するようになります。
カスタマーサクセスは「支援する」だけではなく、価値が届けられた瞬間を言葉にできるようになります。
私は、強い会社とは、優秀な人が集まった会社ではなく、同じ問いについて語り合える会社だと思っています。
マーケティングは、引き算です。
私は、いけばなを続けています。
花をいけるとき、最初に考えるのは、
「何を足そうか。」
ではありません。
「何を残そうか。」
です。
一本を抜く。
葉を落とす。
余白をつくる。
そうすることで、一輪の花が持つ美しさが際立ちます。
一方で、西洋の花束やアレンジメントには、花を重ね合わせることで生まれる美しさがあります。
どちらが優れているという話ではありません。
美しさの考え方が違うのです。
私は、マーケティングはいけばなに近いと思っています。
情報を増やすことよりも、
本当に伝えたい価値を残すこと。
施策を増やすことよりも、
本当に必要な施策を選ぶこと。
シンプルとは、少ないことではありません。
本質だけが残っている状態なのです。
最後に
マーケティングは、マーケターだけの仕事ではありません。
会社全体が、お客様を理解し、価値を考え、対話を重ねるための思考です。
だから私は、何か新しい施策を考える前に、必ずこう問いかけます。
「私たちは、誰に、どんな価値を届けようとしているのだろう。」
この問いが共有されていれば、施策は自然とシンプルになります。
そして、そのシンプルさこそが、人の心に届くマーケティングを生み出すのだと、私は信じています。
編集後記
AIによって、施策を考えたり、文章を書いたりすることは、これからますます容易になるでしょう。
だからこそ、人に求められるのは、「何をつくるか」ではなく、「なぜ、それを届けるのか」を問い続ける力です。
マーケティングとは、流行の手法を知ることではありません。
組織の中に、お客様を起点に考える文化を育てること。
FtheCotは、その文化を、対話を通じて一緒につくっていきたいと考えています。