人は変えられない。だから、きっかけをつくる。
リーダーになった頃の私は、「人は変えられる」と信じていました。
でも、経験を重ねるほど、その考えは少しずつ変わっていきました。
「もっと頑張れば、きっと変わる。」
部下を持ち始めた頃の私は、そう思っていました。
もっと丁寧に教えれば。
もっと時間をかければ。
もっと本気で向き合えば。
相手はきっと変わってくれる。
そんなふうに信じていました。
でも現実は、思っていたほど単純ではありませんでした。
どれだけ言葉を尽くしても、変わらない人はいます。
どれだけ期待しても、思うようには動かないことがあります。
そのたびに、
「自分の伝え方が悪いのだろうか。」
「もっと頑張れば変えられるのではないか。」
そう自分を責めた時期もありました。
人は、誰かに変えられるものではない。
そんな経験を重ねるうちに、一つの考えにたどり着きました。
人は、誰かに変えられるものではない。
特に、社会人として長く経験を積んできた人ほど、
仕事の進め方も、
価値観も、
判断の軸も、
その人自身の歴史になっています。
それは「変わらない」というよりも、
その人が積み重ねてきた人生そのものです。
だから私は、無理に変えようとすることをやめました。
若手には、未来があります。
一方で、若手社員は少し違うと思っています。
経験が少ないということは、
これから吸収できることがたくさんあるということです。
だから私は毎年、入社2年目の社員に一日かけてマーケティングを教えています。
マーケティングの専門家を育てたいわけではありません。
「誰に、どんな価値を届けるのか。」
この視点を、仕事の土台として持ってほしいからです。
若い頃に身につけた考え方は、その人の仕事人生を長く支えてくれます。
だから、若手への教育には時間を惜しみません。
人を変えるのではなく、強みを生かす。
人を変えようとすることをやめてから、
私のマネジメントは大きく変わりました。
考えるようになったのは、
「この人は、何が得意なのだろう。」
ということです。
話を聴くのが上手な人。
数字を丁寧に追える人。
最後までやり切る人。
新しいことに挑戦する人。
人には、それぞれ違う強みがあります。
その強みを組み合わせたとき、
チームは一人では出せない力を発揮します。
私は、チームビルディングとは、
人を同じ方向へ揃えることではなく、
違う個性が、お互いを生かせる環境をつくることだと思っています。
いけばなが教えてくれたこと。
私は、いけばなを続けています。
花をいけるとき、
曲がった枝を見て、
「真っ直ぐにしよう。」
とは思いません。
その曲がり方だからこそ生まれる美しさがあります。
短い枝には、短い枝の役割があります。
大きく咲く花には、大きく咲く花の存在感があります。
私は、それぞれを無理に同じ形にはしません。
組織も同じです。
人には、それぞれ違う個性があります。
その個性を変えようとするよりも、
その人らしく力を発揮できる場所を見つけること。
それが、リーダーの仕事なのだと思っています。
だから、きっかけをつくる。
人は変えられない。
そう考えるようになってから、
不思議と、人への期待の仕方が変わりました。
答えを押しつけるのではなく、
問いを投げかける。
指示を増やすのではなく、
考える時間をつくる。
変化を急がせるのではなく、
小さな一歩を信じて待つ。
変わるかどうかを決めるのは、本人です。
でも、その最初の一歩につながるきっかけは、つくることができます。
私は、それが教育であり、マネジメントであり、マーケティングであり、対話なのだと思っています。
最後に
リーダーになった頃の私は、
「人を変えること」が仕事だと思っていました。
今は違います。
人を変えることではなく、
その人が変わるきっかけをつくること。
そして、
その人らしく力を発揮できる場所を整えること。
それが、私がたどり着いたマネジメントです。
編集後記
人は、自分で変わることはできます。
でも、誰かに変えられることはありません。
だからこそ、相手を尊重し、可能性を信じ、きっかけを届ける。
その積み重ねが、人を育て、組織を育て、文化を育てていくのだと思います。
私もこれから先、新しい誰かを「変えよう」とするのではなく、「その人らしく成長できるきっかけ」をつくれる人でありたいと思っています。